今回のテーマは「ラウンド全体の戦略」です。
90切り達成のために、実際にラウンドをプレーする時、何を狙い、何を工夫し、何に気を付ければいいのか、その考え方の部分に注目していきます。
最初に結論
「ボギーオン・2パット」を攻防ラインにする
ラウンドでは「ボギーオン・2パット」を基準ラインにして、攻めるとべきころで攻め、守るべきところで守り、スコア90切りを狙いましょう。
ちなみに「ボギーオン」とは、「パーオン」より1打多い打数でのグリーンオンのこと、つまり、パー4のホールであれば3打目、パー5のホールであれば4打目でのグリーンオンのことを意味します。
「ボギーオン・2パット」がどんな意味を持つのか、そして「攻防ライン」とはどういうことなのか、順番に見ていきましょう。
ボギーオン・2パットが「基準」
全ホールボギーでスコアは「90」
「ボギーオン・2パット」で上がった場合、そのホールは「ボギー」ですね。つまり、全てのホールを「ボギーオン・2パット」で上がれば、スコアは72+18=90となります。
これを基準として、いろいろなゴルフ教材で「スコア90切りのためには、全ホールでボギーを取るペースでラウンドを進めればいい」というアドバイスを目にします。
ところが、これでは「90ちょうど」にはなっても、「90切り」にはなりませんね。
攻防ライン
全ホールでボギーを狙って、もしそれが上手くいったとしてもスコアは「90」です。
それに、人間がロボットのように全ホールでボギーを取れることなどまずあり得ません。ミスが重なってダブルボギー以下の結果となるホールも、きっとあります。
つまり、「ボギーオン・2パット(=全ホールでボギー)」を基準にしながら、良いホールと悪いホールがあって、全体として最終的に良い方が上回ってはじめて、見事90切り達成となるわけです。
だから、「ボギーオン・2パット」が「攻防ライン」になるのです。
「攻め」一辺倒では、このラインは突破できません。
パーオン狙いで無理やり飛ばそうとしたり、危険を顧みないベタピン狙いのアプローチを繰り返したりすれば、それがどこかで致命的なミスを生み、大叩きするホールが出てきて、全体的にはむしろ悪い結果となってしまうでしょう。
だから、「攻め」だけでなく「守り」の意識も必要なのです。この「攻防」こそが「コースマネジメント」だと言ってしまってもよいかもしれません。
ラウンドの中には「攻めどころ」と「守りどころ」があります。リスクの大きいところでは守りに徹し、大きなリスクを伴わないチャンスが舞い込んできたら迷わず攻める、そのメリハリが大切です。
では、90切りを目標としてラウンドを回る場合の主な「攻めどころ」と「守りどころ」にはどんなものがあるのか、順番に見ていきましょう。
90切りのための「攻めどころ」
一番の攻めどころは「寄せワン」
90切りを目指すラウンドの中での一番の攻めどころが「寄せワン」のチャンスの時です。
寄せワンとは、「寄せてワンパット」、つまり「ボギーオン・1パット」のパーで上がることを狙うわけです。
例えばこんな時が当てはまります。
- 2打でグリーンのすぐ近くまでたどり着いた。3打目のアプローチの距離が短く、ピンの近くまで行けそう。
- 2打で50ヤード圏内まで来た。グリーン中央にカップが切られている。
一つ目は、距離の短いパー4のホールなどで生じることのあるケースです。
3打目をパターなどで狙い、きっちりピンの近くまで寄せ、ワンパットで沈めれば攻略成功です。
アプローチショットをしっかり練習すれば、もう少し遠目からでも寄せワンが狙える可能性もあります。だからアプローチの練習が大切なんですね!
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二つ目のケースでは、カップが中央にあるので、小細工なしでグリーン中央を狙ってアプローチし、きちんとオンできれば、1パットで沈めるチャンスとなります。
寄せワンの注意点は、この状況を生み出そうとして1打目・2打目の時に無理をしないことです。
距離を少しでも稼ごうと全力でショットしたり、1打目が林や深いラフに入ったにも関わらず、狭い隙間を通して無理やりグリーン方向を目指したり、といったことはしてはいけません。
なぜなら、後述しますが、それらが「攻めどころ」ではなく「守りどころ」だからです。
「無理なくプレーした結果として寄せワンのチャンスが転がり込んで来たら狙う」という意識が大切です。
とにかく1パットなら「パー」
ボギーオンした後、グリーン上で「寄せワン」とは言えないような距離が残っている時でも、とにかくそこを1パットで沈めてしまえば「ボギーオン・1パット」でパー達成です。
ボギーオンできた時の最初のパッティングでは、「決めたら私の勝ちだ!」と思いながら臨みましょう。
低リスクでのパーオン狙い
低リスクでパーオンが狙える時も、攻めどころです。
パーオンが決まれば、そこから2パットで上がっても「パーオン・2パット」のパーが取れます。
パーオンが狙えるケースとして、例えばこんなパターンがあり得ます。
低リスクでパーオンが狙える
主なケース
- 距離の短いパー3。
- パー5でミスなく前進した結果、3打目にウェッジでグリーンを狙えるところまで来た。
上のように、パー3やパー5のホールがチャンスだったりします。
ただ、ゴルフ場としてもコースを手応えのあるものにしたいはずなので、距離の短いパー3では、トリッキーなところにカップが切られていることが多いかもしれません。
例えばそれがバンカー付近であったりする場合、無理にピン方向を狙わず、グリーン中央もしくは周囲に危険の無い場所を狙って打ちましょう。
仮にこの「パーオン」の挑戦が実らなくても、ショットで大失敗せずグリーン周りにたどり着けたなら、次は「寄せワン」のパー奪取に挑める可能性が残ります。
それもダメだった場合には、「ボギーオン・2パット」という既定路線に戻っていけばよいのです。
「攻めどころ」に挑む時のアドバイス
攻めるどころに挑む時に気を付けたいのが、「沈めに行くパッティングがショートしないようにする」ことです。
せっかくの「攻めどころ」でも、カップに届く強さでパッティングしない限り、カップインの確率はゼロです。
チャンスをモノにできる可能性を少しでも高めるために、「カップの距離+1歩分」の強さを心がけてパッティングに挑みましょう。
90切りのための「守りどころ」
次に、「守りどころ」を見ていきましょう。
上で見た「攻めどころ」は、グリーンに乗せるタイミング、もしくはグリーン上でようやく到来しますが、その前にまず「守りどころ」があります。
それらを潜り抜けてはじめてチャンスにたどり着けるというわけです。
ティーショットのOBを避ける
各ホール、最初からいきなり、しかも一番重要な「守りどころ」が来ます。
そう、ティーショットで絶対にOBを打ってはいけないのです。
OBは、テンプラよりも、チョロよりも、空振りよりもスコアを悪くする、最も避けるべきミスの一つですが、OBを打たないことを最優先に考え、力を抑えてショットするだけで、ほぼ100%防ぐことができます。
これらのことについては、こちらの回で詳しくご紹介しています。
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OBを1回でも出してしまうと、そのホールを棒に振るだけでなく、「90切り」というラウンド全体の目標達成を一気に難しくしてしまいます。
後々の「攻めどころ」を手に入れるための準備だと思って、1打目は「守りどころ」としてプレーしましょう。
トラブルショットで無駄なあがきをしない
バンカー、ラフ、林や急斜面などに打ち込んだ時。
いわゆるトラブルショットの時。そこは「守りどころ」です。
そんな時の1打、私たちはついつい頭に血が上り、先ほどの失敗を帳消しにしようとして、無茶なショットを狙ってしまいがちです。しかし、そんな不利な状況下で、わざわざ勝負に出るべきではありません。
その理由は次の通りです。
トラブル時に勝負すべきでない理由
- 成功率が低い
ボールの置かれている状況が悪いので、狙い通りのショットが出る確率は、フェアウェイでのプレー時よりもはるかに低い。 - 得るものが少ない
仮に完璧なショットが打てたとしても、得するのは「リカバリーショットに費やさずに済んだ1打」だけ。トラブルショットで2打以上得することは絶対に無い。 - 損害は青天井
失敗を重ねてドツボにはまれば、損する打数はいくらでも膨れ上がる。
大叩きするホールが一つでも出れば、私たちの90切りの夢は儚く散ります。
トラブルショットの時、私たちはいつもその危険と隣り合わせなのです。
落ち着きましょう、攻めている場合ではありません。深呼吸をして気持ちを切り替え、損失を少しでも小さくするための守りが必要です。
無謀なアプローチを控える
グリーンに乗せる1打は、先ほど「攻めどころ」として登場しました。しかしそれは、距離が短く周辺に池やバンカーがないなど、リスクが少ない状態で思い切ったチャレンジができる場合に限ったことでした。
それ以外の場合は、むしろ「守りどころ」です。
遠くから無理な強打で2オンを狙うと、ボールが大きく狙いをそれていくリスクがありますし、グリーン周りでのダフリやトップといったミスは、1回出ることに1打以上ずつの損をしていくことになります。そういう事態は避けたいところです。
ここで思い出したいのは、「ボギーオン・2パット」が攻防の基準ラインであるということです。
3打でグリーンへ乗せさえすれば十分なわけですから、リスクがある時は無理にパーオンを狙わない、そして、アプローチショットが簡単でない場合は「寄せる・決める」は忘れ、「とにかくグリーンに乗せる」ことだけに集中するという手堅い戦略で、長いラウンドを辛抱強く戦っていきましょう。
にんゴルでは、グリーンに乗せ損なわないことをアプローチの最優先事項と捉えていて、「アプローチショットで使うクラブはAW1本に絞り、2種類の打ち方をしっかり身に付ける」ことをおすすめしています。
詳しくはこちらの回をご覧ください。
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3パットを極力打たない
最後の「守りどころ」はグリーン上です。
せっかく上手にボギーオンが出来ても、毎回3パットを繰り返しているようでは、「ボギーオン・2パット」の戦線からズルズルと後退してしまいます。そのため、パターの技術はとても大切です。
難しいロングパットをバシバシ決める必要はありません。一度も3パットを叩かずにラウンドを終えるなんて無茶なことも言いません。ただ、「ある程度の範囲内であれば、ほぼ2パットで上がれる」くらいの自信と実力を身に着けておくことが大事なのです。
にんゴルでは、パッティングを安定させるコツとして、「自分の『基本の振り幅』を5通り用意しておき、それらをゴルフ場にあわせて使っていく」というやり方をおすすめしています。ご興味があれば、こちらもご覧いただければと思います。
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まとめ
- ラウンドでは「ボギーオン・2パット」を基準ラインにして、攻めるとべきころで攻め、守るべきところで守り、スコア90切りを狙っていこう。
普段プレーしている時に意識しにくいことですが、わたしたちは、「守りどころ」でしっかり守れた時にも、90切りへと一歩前進しています。
ラウンドの中では、「攻めどころ」と「守りどころ」の両方を楽しみながら、「攻めどころ」で会心のショットが出たときだけでなく、「守りどころ」を切り抜けた時にも自分のプレーを誇りましょう。
そうすることで、ラウンドの中で「やった!楽しい!」と思いながらプレーできる時間も、きっと増えるはずです。