今回のテーマは「ショットのルーティン」です。
初心者・初級者の頃は、ゴルフ場の広いフィールドに立った途端、頭が真っ白になって何をしていいか分からなくなる…なんてことがあると思います。
そんな方々は、今回ご紹介するルーティンを身に付けることで、スコア改善につながるかも知れません。
最初に結論
心の中に「決断のライン」を引く
自分だけのルーティンを作り、ショット時にはいつもそのルーティンが無意識に行われるくらい、身体に染み込ませましょう。
そんなルーティンとして、にんゴルでは、心の中に「決断のライン」を引く方法で、以下の順番でショットに臨むことをご提案します。
にんゴル推奨ルーティンの
ポイント
- カートを降りたら、使いそうなクラブを3本掴んでボールに向かう(ボールが打てる状態だと確認できたら、ボールの後ろに立つ。)
- ターゲット方向を決め、「ターゲットまでの距離」を測る
- ライ、高低差、風を考慮して「打つ距離」を決め、その距離が出せるクラブを握る
- 距離をイメージしながら、一回素振りをする
- エイミングで方向を決める
(ここで「決断のライン」を踏み越えてボールに近づく。ここからは何も考えない。) - アドレスしたら、迷わずにショット
さあ、以下でひとつずつ詳しく見ていきましょう。
ショットのルーティン
さっそくルーティンの内容について見ていきますが、その前にひとつ、初心者・初級者にありがちな「偽ルーティン」のお話をしておきます。
偽ルーティンにご注意を
忍三郎がまだスコア100も切れていなかった頃、ボールを打つまでのお決まりの動作は次のような感じでした。
忍三郎がやっていた
「偽ルーティン」
- ボールの前にたどり着くや否や、何となくの素振りを2回。特に意味はない。そのまま構える。
- 首だけ動かして狙う方向を探し、足元をモゾモゾ動かし、また狙う方向を見て、足元をモゾモゾ。これを4、5回。特に意味はない。
- 数秒の硬直。特に意味はない。
- 突然鬼の形相で振りかぶり、土を耕す。特に作物はない。
一見すると、いつも同じ動きをしてから打って(ダフって)いますので、ルーティンのようにも思えますが、こんなものはルーティンとは言いません。
毎回何も考えていないから、「何も考えてない不安な人間の動き」が毎回出てしまっていただけです。
毎回似たような動きをする癖と、意識的に一連の動作を行うルーティンは、全くの別物です。
この「偽ルーティン」の悪い点は大きく2つあります。
ひとつは当然、打つ前に頭を使っていないこと。そんなヤツは、棒を持った動物みたいなものです。
もうひとつは、構えてから打つまでが長すぎることです。この時間が長いほど、身体がこわばり、自然にスイングできるチャンスが失われてしまいますし、プレーが遅くなり、他のプレイヤーにも迷惑をかけてしまいます。
様々なプロも取り入れた「決断のライン」
偽ルーティンを脱却し、スコアアップに役立つ本物のルーティンを身に付けるためにとても役立つのが、ピア・ニールソン氏が提唱する「ビジョン54」という考え方です。
ピア・ニールソン氏は、自身が元女子プロゴルファーであるだけでなく、伝説の女子プロゴルファーであるアニカ・ソレンスタム選手や、日本では宮里藍選手を指導した実績を持つ、有名なコーチでもあります。
彼女たちのような名だたる一流プレーヤーも、「ビジョン54」の考え方に感銘を受け、それをプレーに取り入れていました。
「ビジョン54」とは、全てのホールでバーディ、つまりスコア「54」を目指すためのマインドセットなどを説くもので、一見、われわれアマチュアゴルファーとは無縁のように感じられますが、その中の有名な教えの一つに、「決断のライン」というものがあります。
これは、ショットの時の私たち一人ひとりの心の中から、一切の「迷い」や「怖れ」や「不安」を取り去り、私たちを最高の精神状態へと導いてくれる思考方法なのです。
皆さんをスピリチュアル方面へ誘導したいわけではありません。
「ビジョン54」では、ショットに向かう時の自分の周囲を「Think Box = 思考ボックス」と「Play Box = 実行ボックス」に分け、その境界線を「Decision Line=決断のライン」と呼ぼう、と言っています。
二つのボックスの役割はこうです。
ショットの前、まずは「思考ボックス」に立ち、距離やライなどを見て、「今からどんなショットを打つ必要があるのか」ということを、その中で全て考えてしまいます。ショットのイメージを固めるための素振りも、ここで済ませます。
今、この1打で何をすべきかがはっきりしたら、「決断のライン」を踏み越え、「実行ボックス」へと進みます。
「実行ボックス」に入ったら、もう何も考えず、「思考ボックス」でこうすると決めたことを単純に実行します。予め決めた通りに、テキパキと構えて、ぱこーんと打つわけです。
だからこそ、2つのボックスの境界は「決断のライン」と呼ばれるのです。
この思考方法の良いところは、私たちに「この1打で何をすべきか、打つ前にしっかり考える」ということを忘れさせず、しかも「一度決めたらさっさと打つ」ようにさせてくれることです。
思い出してみれば、忍三郎が抱えていた大きな二つの問題は、打つ前に全然頭を使わないことと、構えてから打つまでが長すぎることでした。問題と解決策がドンピシャです。
実際、「ショットの前には心の中で決断のラインを引くぞ」という決め事を一つ作っただけで、忍三郎はこれらの問題を全て解消することができました。
ルーティンの内容
心の中に「決断のライン」を引く思考方法のすばらしさをご紹介しましたが、これで、ルーティンを行うための「場所」が用意できました。
そうしたら次は「その場所で何をするか」が大事になります。にんゴルの提案は次の通りです。
にんゴル推奨ルーティン
(1)思考ボックスに入る前に
- クラブを3本掴む
まず、考え始める前の準備です。考えた結果に応じて柔軟に対応できるように、カートを降りたら、複数のクラブを持ってボールのところに向かいましょう。
忍三郎は、使う可能性のあるクラブを3本くらい持っていきます。
「このクラブ、やっぱり違った」といってカートに戻るのは、ラウンドを一緒に回る組全体の進行を遅らせてしまいますから、スコアアップだけでなくマナーの面からも、ぜひこの癖は付けておきましょう。 - ボールの状態を確かめる
ボールのある場所に着いたら、まずはボールが普通に打てる状態かどうか確かめます。
バンカーや深いラフに入っている、地面にかなり埋まり混んでいる、木の傍にあるなど、いつも通りのスイングが通用しなさそうな時は、1打の損を受け入れて、安全な場所へとボールを救出することを最優先に考えるべきです。
ボールがちゃんと打てる状態にあると確認できたら、「思考ボックス」に入ります。
(2)思考ボックスに入ったら
- ターゲット地点を決める
思考ボックスに入ったら、まずは、今回の1打をどの場所へ打ちたいか考えます。
その次の1打が打ちやすいところを選ぶのが基本ですが、「次はあそこから打ちたい」という自分の希望だけでターゲット地点を決めるわけにはいきません。
例えば、周辺にバンカーや池があったり、右か左に少しずれるとOBになるようなきわどい位置をわざわざターゲット地点に選ぶのは避けたいです。自ら危険に向かって飛び込むようなものですからね。
また、ターゲット地点が安全そうに見えても、そこへ向かうボールの軌道を木の枝などが阻んでいたりすれば、別のターゲット地点を探さないといけません。
「自分で勝手にゴルフを難しくしない!」と念仏のように唱えながら、危険をひたすら避けてターゲットを決めましょう。 - 「ターゲットまでの距離」を知る
ボールを運びたい地点を決めたら、そこまでの距離を調べます。
ゴルフ場に用意された100y杭や150y杭などを目安にしてももちろんいいのですが、ここはGPSかレーザー距離計がぜひ欲しいところです。距離について正確な情報が得られれば、正確な作戦が立てられるからです。
ホールを俯瞰できるGPSのスマホアプリやGPSウォッチも良いですが、あらゆる場面で使え、練習場でも活躍してくれるレーザー距離計も捨てがたいです。予算を一番抑えるなら、スマホアプリでしょう。こちらもチェック!今回は、普段の練習や本番のラウンドで、私たちを「スコア90切り」の目標へと近づけてくれる頼もしい道具をご紹介します。 最初に結論 キーワードは「距離感」 90切りの目標達成を助けてくれる頼もしい道具とは、「ラウンド時の[…]
- ライを見る
次は、ボールのライを見ます。主なチェックポイントは、芝の長さ、ボールの状態、地面の傾きです。簡単に言えば、次のような傾向があります。
芝の長さとボールの状態は、使用できるクラブの種類に影響します。ボールが隠れるほど深いラフだと、ウッドやフェースの立ったアイアンでは芝に負けてしまいますから、ショートアイアンで芝ごとボールを刈り取るようにして脱出することが最優先になります。
地面の傾きは、「つま先上がり・つま先下がり」がボールの左右の飛び出し・曲がりに影響し、「左足上がり・左足下がり」がボールの打ち出し角、ひいては飛距離に影響します。いずれも、自分が立つのも苦労するような大傾斜の時は、ミスショットの危険性が高まりますから、軽ーく打って平らな位置へボールを逃がすなど、1打の損を受け入れる広い心で臨みましょう。 - 高低差と風を考慮する
ターゲット地点と現在地の高低差も加味しなければなりません。打ち上げの場合うは本来の距離より大きな番手が、打ち下ろしの場合は小さな番手が必要になりますが、ターゲット地点が近いと、番手変更の必要な度合いは小さくなります。
また、風の強さや向きによっても、番手を変えたり、打ち出し方向を変えたりする必要があります。 - 「打つ距離」と「打ち出す方向」を決める
計測した「ターゲットまでの距離」に、ライや高低差や風の影響分を加味して、「実際に打つ距離」と「打ち出す方向」を決めます。そして、持ってきた3本のクラブの中から、「実際に打つ距離」に合ったものを掴みます。 - 素振りを1回
スイングのやり方を思い出しながら、1回だけ素振りします。ラウンド時の素振りというのは不思議なもので、やればやるほど不安になってしまいます。
忍三郎は、素振りは基本1回だけにしていて、どうしても気になった時に2回行なうようにしていますが、3回以上は絶対にやらないと決めています。
素振りを繰り返すほど気になる点が増えてしまい、打てるショットも打てなくなってしまうという自覚があるからです。こちらもチェック!今回のテーマは「スイングのやり方」です。 初心者の方でも簡単にできて、100切りや90切りのレベルまで十分に通用するスイング方法をご紹介します。 最初に結論 スイングはできる限り「単純」なものにする にんゴルでは[…]
- エイミングでスパットを決める
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- いざ打たん!
これで、ショットを放つ準備はできました。勇気を持って、決断のラインを踏み越えます。ボールの前に立ったら何も考えず、これまでに決めたことを機械的に実行します。
以上です。ここまで見てきたルーティンをまとめると下のようになります。
<にんゴル推奨ルーティン>
~カートを降りる~
① クラブを3本掴む
② ボールの状態を確かめる
~思考ボックスに入る~
③ ターゲット地点を決める
④ 「ターゲットまでの距離」を知る
⑤ ライを見る
⑥ 高低差と風を考慮する
⑦ 「打つ距離」と「打ち出す方向」を決める
⑧ 素振りを1回
⑨ エイミングでスパットを決める
---決断のライン---
~実行ボックスに入る~
⑩ 迷わずショット!
忍三郎はいつも、「思考ボックス」の中で、以上のような流れで準備をして、ショットに臨んでいます。「実行ボックス」に入ったら、やると決めたことをロボットのように実行するだけです。
やることがすごくたくさんあるように感じられるかもしれませんが、普段の練習から癖をつけておけば、自然に行えるようになりますよ。
ライ・高低差・風の読みについて
ルーティンの中で考慮する要素として、ライや高低差や風を挙げましたが、それぞれがどの程度狙いに影響を与えるかはケースバイケースで全く異なってきます。
にんゴルの信条は、ゴルフのあらゆる要素を単純化してお伝えすることですが、残念ながらこの点については「ラウンドを通じて経験を積み重ねるしかない」としか言えません。
そんな経験を積み重ねる方法として、キャディーさんについてもらってラウンドする、というのは良い方法です。
特にベテランの方は、お願いすると「少し打ち上げ、風はアゲインストだから、残り距離よりも2番手大きいクラブを持つといいですよ」などのアドバイスをしてくれます。
自分なりの読みをしてみる→キャディーさんに尋ねてみる→打ってみて答え合わせ、という感じで、効率よく経験値を稼いでいくことができるはずです。
ルーティンはプロと同じことができる!
ここまでに紹介したのは、忍三郎が実際に行っているルーティンですが、必要なことさえしっかりと含まれているなら、内容も順番も、この通りである必要など全くありません。
むしろ、自分専用のルーティンを作り上げる方が良いでしょう。
どんなルーティンを組むかは、ゴルファーそれぞれの自由なわけなので、誰かに細かく指図されてそれに従うのではなく、自分自身が一番自然に、もしくは快適に感じるようなやり方にすべきです。
そのようなルーティンを探す上では、ぜひ色々なプロが行なっているルーティンを見て、試しに真似してみると良いでしょう。
スイングなどの技術的な面で、プロの真似をすることはとても難しい(特に男子プロについては、ほとんどのサラリーマンにとって、真似することは不可能と言ってもいい)ですが、ルーティンや思考方法といった面は、プロの完全コピー、丸パクリが可能です。
皆さんが憧れているプロのルーティンをコピーすることで、より楽しく気分よくプレーすることにもつながるかもしれません。
練習場でやってみよう
1球ずつ意図を持って打とう
自分のルーティンを考えたら、それをメモして、早速練習場に行ってみましょう。
エイミングの回でも書きましたが、練習場では、一球ごとにルーティンをしっかり行ってから球を打つのがとても有意義で、おすすめです。
これによって、ラウンドの時も、練習場と同じ感覚で狙いを定め、構え、打てるようになるからです。
一連のルーティンを、自分の癖として身体に覚え込ませてしまいましょう!
ルーティンは速やかにスムーズに
自分のスコアに磨きをかける意味だけでなく、一緒にラウンドする仲間たちを長く待たせないという意味でも、自分のルーティンに過度に時間をかけないよう気をつけることが大切です。
ゴルフは、自分も仲間も皆が気持ちよく回ってこそ楽しいものですよね。だから、一緒に回る仲間たちを長く待たせず、彼らが気持ちよくプレーできるようにするためにも、日頃からしっかり練習して、滑らかなルーティンを身につけておきましょう。
まとめ
- 心の中に決断のラインを引き、いつも決まった順番でスイングの準備をしよう!